消息不明からの絶望
アメリカの オーシャンゲート社 (Ocean Gate) が運航する 潜水艇タイタン号 (Titan (submersible)) が、カナダのニューファ
ンドランド島にある港湾都市セントジョンズを 2023年 06月18日 午前 08時(米東部夏時間)に出発し、東へと約 375海里(約 700km)進み、約 2時間半かけて水深 13,000ft(約 4,000m)まで潜水して、世界で最も有名な沈没船「タイタニック号」が 眠る暗い深海 を目指す予定だったが、1時間 45分後、タイタン との 通信 が 途絶 え、消息不明 になった。
この時点で、乗員乗客が吸える酸素の容量は約 94時間で尽きる計算で、一刻を争う捜索救助活動が開始されることになった。
タイタンに乗っていたのは、この潜水ツアーを運航していた オーシャンゲート社の共同創業者兼最高経営責任者 (CEO) を含む 5人。
06月19日の朝、米沿岸警備隊はカナダ軍やこの海域にいた民間の船舶と協力し、ケープコッドから東に 900mile(約1,400km)の海域での捜索を開始している。
米沿岸警備隊少将のジョン・マウガー氏は「沿岸から遠い海域で難しい捜索となっていますが、タイタンを確実に発見できるよう投入可能なリソースをすべて投入しています」と、記者会見で語っていた。
ハーヴァード大学の海洋学者のピーター・ガルギス氏は、オーシャンゲート社のようにはるか沖合で潜水する場合、「助けが来るには 3〜 4日から 1週間かかる」と言う。
それに、母船のポーラー・プリンスの乗員が「タイタンの消息不明」を米沿岸警備隊に伝えたのは、なぜか 8時間近く経ってからだった。
つまり、マウガー氏の記者会見の時点で、タイタンの残量酸素は約 63時間分しかない計算になる。
そんな事態のなか米国とカナダの当局は、コネティカット州の 2倍の広さの海域、それも深さ 2.5mile(約 4,000m)の海域から、全長わずか 22ft(約 6.7m)の潜水艇を見つけ出すという難題に取り組まなければならないのに、さらに問題を難しくする要因が、タイタンには緊急時に電波を発するビーコンも、専用の救出システムもなかったのである。
「母船から何かを下ろしてタイタンを見つけたり、タイタンを引き上げたりする方法がまったくありませんでした。電波発信機がなかったことで、タイタンは誰にも気付かれずに海面を漂流している可能性すらある。」と、海洋学者のガルギス氏は言う。
その後、米海軍の関係者は 22日、「タイタン」が大西洋で消息不明になってまもなく、「破壊と合致する」音を検知していたと明らかにした。
同 22日米沿岸警備隊は、タイタニックの船首から約 490m 離れた海底で、船体の一部とみられる破片が見つかり、乗船していた 5人は全員、潜水艇内部の破滅的な破壊によって死亡したとみられるという発表がなされた。
22日の時点では、内部破壊の原因は不明だが、最大の原因は「タイタンの構造」ではないかと言われている。
ほとんどの潜水艇は「鋼鉄かチタン製の球形の耐圧殻」を備えているが、タイタンは、全長 6.7m、重量 10,432kgの船体は「炭素繊維強化プラスチックとチタンからなり、耐圧殻となる 2つのチタンの半球が炭素繊維強化プラスチックの筒で接続」される構造だったと言う。
過去には安全性について、懸念が指摘されていたことも複数のメディアが報じていた。
いずれにせよ、深海でどんな問題が起きて事故に繋がったのか? 原因の究明には時間がかかることが予想される。
しかし、沈没船「タイタニック号」を見る為の潜水ツアーで、自らが犠牲になってしまうなんて・・・悲劇だとしか言いようがない。
2023年 06月 30日
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